Sunday, July 19, 2020

The Prince Hakone Lake Ashinoko, Togo Murano




平日だったから異様に静かだった。霧雨が降ったり止んだりしていた。
どこまでが計算ずくなのか、その場所を構成する造形の一つ一つが妙にシュールレアリスティックで、
そこにいると時間の感覚が希薄になるような、夢のなかの景色を見ているような気がした。
軟体動物みたいなバルコニーのある、双子みたいな全く同じ二つの建物、
奇妙に群れる杉の高い木立、薄いカーテン、紫陽花のしげみ、
それから静かな湖面を一瞬だけ乱したあの大きな水しぶき。……
しかも地面が少し傾斜しているから、建物を正面から撮ろうとするとほんの少しだけ歪んでしまう。
そんなことも含めて彼岸と此岸のあいだみたいな、もうここから帰れないんじゃないか、むしろあんなホテルはなかったんじゃないか…… 戻ってきて思い返すと不思議にそんな感じがしてくる。